東北学院大学 工学部 機械の同窓会です。

1511私の趣味@蒸気機関車の製作

私の趣味

蒸気機関車の製作を始めて

                           工学部 機械工学科 

伊藤 信義(第4回生)

はじめに

 『さんえる』第23号に掲載された『私にとっての鉄道模型』の第2版として、その後の経過について報告致する。父が(旧)国鉄職員で施設部工事区に努めていた関係より、小学校卒業までは鉄道官舎に住んでいた。一概には言えないが、鉄道官舎は鉄道の駅近くかあるいは線路沿いに建っており、必然的に毎日、蒸気機関車、客車及び貨物列車などの車両を眺めることが日常であった。小学校高学年になり、すでに勤めていた兄が正月に帰省した折、せがんで鉄道模型(Oゲージ軌間32.00㎜)の電気機関車、客車、制御装置(パワーパック)、転轍機および信号装置など一式を購入してもらった。このことが鉄道模型の世界へと導かれるきっかけになった。

図1 5インチゲージ用蒸気機関車
図1 5インチゲージ用蒸気機関車

 その後、社会人になるまでは、この世界からしばらく遠のいていたが、長男が小学生になった頃、新しいNゲージの鉄道模型が出てきて、それが鉄道模型ファンに瞬く間に広まり、現在、鉄道模型といえばこの種の模型が主流となっている。この模型の利点は、軌間が9.00㎜と小さいため、狭い場所でも一応のレイアウトが出来ることと、車両関係も入手しやすい価格であり、鉄道模型を始めたいと考えている人にとっては入門しやすいものと考えられる。

図2 蒸気機関車図面  (5.00インチゲージ用)
図2 蒸気機関車図面  (5.00インチゲージ用)

5年間ほど、Nゲージを楽しんでいたが、何か物足りないものを感じつつ過ごしていたところ、平成5年の7月に、機芸出版社より、『生きた蒸気機関車を作ろう(図解ライブスチーム入門)平岡幸三 著』という単行本を購読し、これこそ自分が長年夢に描いていた蒸気機関車の「製作から運転までのすべて」が分かりやすく記述されており、しかも工作に必要な最低限の工具類、工作機械類、材料および塗装関係が掲載されている。この本の内容に忠実にしたがい製作をすれば、確実に機関車を完成させることが出来る、という非常に優れた技術資料となっていた。この本をもとに蒸気機関車を製作することに決め、計画を実行に移した。本文では準備から完成までの工程について述べることにする。
1.各種工作機械の選定と据え付け
はじめに今後、どの程度の大きさの機関車を造るかにより各種工作機械の大きさも決まってくる。また、実際に要するスペースは車両の通過半径より、ある程度の広さを必要とする。筆者は3.50inch(軌間89.50㎜)と5.00inch(軌間127.00㎜ 図1参照)のどちらの車両でも走行することが出来る3線方式(ディアルゲージ方式)とし、それに基づいて工作機械の大きさを決め、専用の木製架台を造ることにした。

図3 購入した卓上精密旋盤 (コスモキカイ(株)製)
図3 購入した卓上精密旋盤 (コスモキカイ(株)製)

まず、機関車の製作に絶対に必要な工作機械は旋盤であるが、この種類は非常に多く、小さいのはチャック径が2inchからあり、大きなものは一般の工場で使用しているようなものまである。ただし、購入前に考慮する必要があるのは、機械重量である。室内で使用するのを前提とすれば、一般の家庭では一階の床下を補強した上で約200㎏/㎡程度が限界かと思われる。工作室が専用の建物の中とか、倉庫などで床がコンクリートであれば、重さが1,000㎏~1,500㎏程度の小型普通旋盤を使用することができる。筆者は、1階の床の上へ架台を製作し、その上に旋盤を設置するものとし、架台を設置する床下の補強を行った。この補強に際し、床下へもぐり455㎜間隔で13.2㎡(4坪相当)の床全体に対して(根太の下側とベタ基礎との間)格子状に鋼製束(上下間隔が調整できる鋼製の支柱)を配置し、床の補強をしている。床の表面には床板に傷がつかないように、塩ビ製のクッションフロワーを敷き、さらに厚さ12㎜の合板を敷き詰めている。

図4 各種工作機械類
図4 各種工作機械類

このように架台を設置する床の補強が完成したことをうけて、次に工作機械を載せる架台の設計を行った。架台は合計4台で、内訳は〔旋盤用(重量370㎏)、ミィーリングマシン用(重量160㎏)、板金機(120㎏)及び作業架台〕が必要であり、また製作するための設計図が必要となった。当時、勤務していた職場でCADを練習し、昼休みを利用して図面を作成した。旋盤用架台の構造は幅1,800㎜×奥行900㎜×高さ750㎜天板の厚さは38㎜で、幅235㎜のSPF材を4枚組み合わせ印籠つなぎとした。支柱は6本とし、105㎜角の杉柱材を使用した構造になっている。他の二つの架台も構造は同じで、支柱が4本である。天板の結合や支柱の接合には?を造る必要があり、木工機械類を購入することにした。その結果、トリトン社(オーストラリア製)の『ワークセン2000』は木材切断用丸ノコ、溝堀用ルーターなどが装備されており、応用範囲が広く、使いやすいシステム構成より、購入することにした。その他に角のみ機、ジグソー、サンダーおよび電動工具類一式を順次揃えていった。
設計図面に基づいて架台製作に必要な木材は、大手DIYへ行きまとめて購入し、自宅まで運搬してもらうことにした。架台製作期間は旋盤、ミーリングマシンや板金機などは重量物のため運搬業者が現地へ輸送して来ても人の手によって荷下ろしが出来ないため、各種工作機械の納品日時を決め、それに合わせて4台の架台の製作を始めた。架台は支柱の下側に1個2.5t対応の固定ボルト付きキャスターを取り付けた。(室内への搬入時には、部屋の床板の表面と同一の高さで、幅及び長さ共に一番大きな旋盤の架台の長さより大きい仮設架台を業者さんに造ってもらった)当日の朝に仮設架台を庭側に設置し、その上に筆者が製作した架台を設置した。一方、荷下ろし、荷上げ用としてラフタレンクレーン(15t)を手配すると共に、木枠梱包なので一度、運搬してきた車両の荷台よりクレーンで吊り上げ、駐車場に仮置きし、梱包を外した上で、再度、本体だけを吊り上げ、家の屋根の上を越して庭に据え付けた仮設架台の上に設置したキャスター付き架台に下ろし、正確に位置決めを行った上で、旋盤の取り付けボルト穴に合わせた。次に架台天板にドリルで穴をあけて架台へ固定するようにした。
2.工作機械用バイト・各種製作用工具・材料の購入
 購入した旋盤のメーカーより切削バイト(ハイス)が5本ほどついてきたが、使用してみると切れ味が悪く、グラインダーで刃先の研削を試みたが、変わりはなかった。

図5 木工機械 (トリトンワークセンター2000)
図5 木工機械 (トリトンワークセンター2000)

そこで、超硬バイトのP種(青色)、M種(黄色)およびK種(赤色)の3種類のロウ付けバイトを代表的な形状のものを右勝手、左勝手のものを各5本、計15本購入し、使用してみたが、しかし切れ味については満足するものではなかった。色々と悩んだ末に技術資料を調べてみたところ、スローアウエイバイトがある。これは切れ刃(チップ)とシャンクが完全に独立しており、取り外しが非常に簡単で切れ味が悪くなった場合、チップを交換すれば切れ味がもとに戻るといったすぐれものである。

図6 完成した旋盤用架台
図6 完成した旋盤用架台

早速、斜剣バイト、片刃バイトを購入し、使用してみたところ、切削表面の滑らかさはプロ並みのもの得られた。
気を良くして同様の厚さ2.0mmの突切りバ
イト、厚さ1.0mmの外形溝入れバイト、直径3.0mmの隅丸バイト、内径切削用バイトなどいろいろと取り揃えて大いに活用した。ただ、チップの価格は高く最低で500円(個)で、10個入りで5,000円となっている。以上のように次第に旋盤用のバイト類を次々と取り揃えた。次号では本文でふれた工具類とは別の各種工具類や計測機器について報告する。(つづく)

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